「魔王」伊坂幸太郎 おすすめ本の紹介 

政治と異能に翻弄され運命が加速する

今回は伊坂幸太郎さんの小説「魔王」について紹介します。

まだ読んでいない人のためにネタバレしないように記事を書いているつもりです。

安心して読んでください。(楽しめる程度の多少ネタバレを含みます)

 

目次

あらすじ

 ある若き政治家犬養が次期首相として台頭し、世の流れが変わりつつあった。

「あの政治家なら...」と世論が傾きつつある中、会社員の安藤はこの流れに恐れを感じていた。まるでファシズムの再来かのようだ。

 そんな不安の中、自らの体に起こる異変に気付く。大きな存在に抵抗する唯一の術は、”自分が念じれば、それを相手が必ず口に出す”という一種の超能力。

 与えられた運命、不条理を乗り越え、流れを変えられるのか。

「私なら5年で立て直す。無理だったら首をはねろ。」_犬養

「考えろ考えろ、マクガイバー…」_安藤

こんな人に読んでほしい

多数主義な世間に違和感を感じる

自分に与えられた役割について考えることがある

 

 

三つのキーワードで読む

 

異能

 伊坂幸太郎作品にはたまに、異能力を持つ人物が登場する。「オーデュボンの祈り」には、未来を見ることのできるかかしが登場するし、「砂漠」には物体を手を触れずに動かせる女の子が平然と登場したりする。今回、主人公の安藤もある種の超能力に目覚める。

 

宮沢賢治

 なんで急に?って思うことでしょう。小説の中ではいくつもの宮沢賢治作品の引用が使われています。例えば彼の残した詩集からの引用や、みなさんご存じの「注文の多い料理店」などが引き合いに出される場面もあります。作品について知らなくても十分分かるように書かれているので、安心して読んでください。

運命

 あなたは超能力を手に入れたらやりたいことはありますか?超人的な力に目覚めて世界を守るとか、逆に世界を作り替えるために乗っ取りを企てるとか。私も憧れることはあります。ただ、自由勝手にしたあとには何かツケが回ってくる気がして結局は怖くて何もできない気がします(笑)

 能力を手にした安藤は自ら悟りを開くようにやるべきことを定めます。まるでそうなる運命だったかのように。

 さて、皆さんが手に取る、文庫本の「魔王」は二編から成ります。一遍目の「魔王」では超能力を持った安藤と政治家犬養との対決が描かれます。二編目の「呼吸」では対決から5年後の世界を描きます。

 安藤は世界にどのような影響を与えたのか、読んでみてのお楽しみです。

 

感想

 力強く印象的なセリフや引用が随所散りばめてあり、物語に深みが出ています。運命に立ち向かう姿にこれからの自分の生きざまについても考えてしまうような一冊です。

終わりに

 ちなみに、「魔王」には続きの話として「モダンタイムス(上)(下)」が存在します。

ただ、個人的にはどちらも別の話として面白かったので順番などは気にせずに読みたいと思う本を手に取れば良いと思いますよ。

 

 

魔王 (講談社文庫)

魔王 (講談社文庫)